(左)リフト降り場。林道のすぐ下にある。(右)椅子もそのままの状態で、カラマツ林の中をリフトが走っている。
美ヶ原高原まで車で乗りつけることを可能にしたのは、ビーナスラインと美ヶ原林道。その美ヶ原林道は、松本の奥座敷である浅間温泉から急坂と急カーブを繰り返しながら上っていく。その途中に、浅間温泉スキー場があった。袴越山の北斜面にあり、リフト1基(450m)とロープトウ1基があったとの記録があるから、それなりの規模ではあったのだろう。当時のスキー場ガイドを見るとリフトに沿って、初級ファミリーゲレンデ・富士見台ゲレンデ・ダイレクトコース・中央ゲレンデ・林間コースなどが平行してあることが記されている。
浅間温泉から美鈴湖を経て、武石峠がもうすぐかと思われる地点。袴越山の北側あたりに、左手の視界が開ける場所がある。北側に向かって、かつてのゲレンデ跡がくだっている。林道に接している場所がゲレンデの一番上部のようだ。北斜面のため、それなりの積雪もあったのではないか。林道すぐ下にリフト降場の跡が残っている。シングルリフトの椅子までもがそのまま残っている。リフト下に続く踏み跡をたどって、リフト乗場までくだってみると、ヤブの中から鹿が3匹飛び出していった。リフト乗場には、つぶれた小屋と支柱があり、リフトを動かしていた機器がむき出しになっていた。リフトの経路はおもにカラマツの林の中にあるが、そこから、東西に何本かのコースがあった様子がうかがえる。そのあたりは白樺の木が点在し草に覆われているが、そこかしこにウツボグサが咲き、草地に彩を添えていた。
1972年を最後に営業を休止したとのことなので、私は営業中に訪れたことはなかった。やはり松本あたりの人が多く訪れたゲレンデだったのだろうか。「長野県スキー史」によれば、「松本から美ヶ原頂上行バス道路の途中にあり、袴越山の斜面、標高1,800m、乾燥粉雪2mの積雪があり、初級から上級者に親しまれ、北アルプスの展望の良さは魅力的である」と記されている。また、「冬の信州(1977版)」には「初心者向き、女性向きのスキー場」との記述も見られる。雲が多い今日は北アルプスは望めず、正面には戸谷峰をはじめとする筑摩山地の山々の重なりが見えるだけである。(参考資料:小山泰弘「長野県における休廃止スキー場の実態とその後の植生変化」)(現地訪問:2009年7月)
(左)リフト乗場と機器類。(右)ゲレンデ最上部から下部を見おろす。正面の山は戸谷峰。
(左)「冬の信州」を参考に作図。
道路から下に向かって滑り降りる構造だったと思いますが、そのリフト降り場と道路の間がトラバースの滑り跡が酷くて、歩いて登る事に泣き言を言った記憶が残ってます。