
(左)「油坂さくらパーク」下部からゲレンデを見上げる。(右)「'70のスキー」ほかを参考に作図。
岐阜県と福井県の県境にある油坂峠。両白山地の南端近くを越えている。20年以上昔に越美南線(現・長良川鉄道)と越美北線のローカル線の旅に出たときに、この間(美濃白鳥~九頭竜湖)をバスで乗り継いだ。そのバスは思っていた以上に、ずいぶんと山深いところを走ったのが印象に残っている。そんな油坂峠の岐阜県側にあったのが油坂スキーパーク(油坂スキー場)。いろいろな資料を見て興味を持ったのが、国道158号がゲレンデの真ん中を横切っているという点。まさか、平面交差しているはずはないから、おそらくは国道がトンネル状になって、その上をゲレンデが越えているのだろうと考えていた。
「'70のスキー 岳人別冊(1969年10月)」には「奥美濃のスキー場はおしなべて小さいものが多いが、その中でも大きい部類に入るのがこのスキー場である。ゲレンデは第1リフトのある下側が初中級向き、第2リフトのある上側が上級者用となっている。第3リフトに乗ってこの2つのゲレンデをつないで滑れば、奥美濃一のロングコースとなる。ここでは岐阜県の大会も開かれている。小柄ながら中級者のウェーデルン・パラレルの練習にはこと欠かない。(中略)雪質は山深いところなので粉雪が期待できると思っていくと失望する。この越前との国境の山々を越えればその向こうは日本海であるため上越と同じ湿雪」と記載されている。
また、「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」によれば「岐阜県ではもっとも老舗のスキー場。長良川鉄道と並行して走るR156越前街道から分かれるR158がゲレンデの真ん中を突っ切る。クルマが便利。初級向きが80%。ナイター、スクール、レンタルあり」と案内されている。最長滑走距離1,000m。かつては平日でもナイターを行うほどの集客だったらしい。正確な資料を見つけていないが、2004シーズンを最後に閉鎖されたと思われる。
(左)ゲレンデが国道の上をまたいでいる部分を、上部から見る。国道に落ちないよう(?)金網が張られている。(右)国道をまたぐ箇所より上部。
東海北陸道の白鳥ICから福井方面へ、わずかな区間だけ完成している中部縦貫道を白鳥西ICで降りる。出口の案内板は様々な観光地やスキー場を示しているが、左折「油坂スキーパーク」の文字は消されながらもうっすらと読み取れる。国道158号は大きくカーブを切りながら高度をかせいで、やがて「油坂さくらパーク」の看板のあるかつてのゲレンデ下に出る。跡地にはキャンプ場や釣堀などのあるレジャー施設が、2008年に完成している。斜面には、リフトなどスキー場の施設の痕跡は見つけることができなかった。
初級80%とはいうものの、ゲレンデ下から見上げれるとけっこうな傾斜を持った斜面に見える。国道との交差は2箇所あり、国道が半トンネル状になりその上を幅20~30mほどのゲレンデがまたいでいる。ゲレンデの両側には金網が張られていた。国道よりも上部にもゲレンデが広がっているが、最後の頃はペアリフト1基だけになっていたようだ。さくらパークの名のとおり、ゲレンデ一帯には桜が植えられている。上部からゲレンデを見おろせば、山中に引き回された道路をパノラマのように見わたすことができた。(現地訪問:2010年5月)