(左)正面に見える猿毛岳北西斜面にゲレンデは開かれていた。いまは杉の植林が広がるが、目を凝らすとリフトのワイヤーがその中に見える。
新潟県加茂市。古くから北越の小京都といわれ、栗ヶ岳を水源とする加茂川が流れる三方を山に囲まれた町。以前、車で通りかかったことがあるが、川沿いから眺めた風情ある佇まいが印象に残っている。
その市街地から加茂川を遡れば、ほどなく左手に猿毛という集落があらわれる。猿毛岳の西側に位置するこの集落から、山間に向かってダートの林道を進めば、やがて猿毛岳スキー場の跡地に到達する。高い煙突が立つコンクリート造のロッジの建物が崩れながらも残っているし、杉林の中に夜間照明塔が何基か建っていて往時をしのばせる。いまは農機具置場になっているらしい木造の建物も2棟あるが、それらもスキーと関係があったのではなかろうか。
ゲレンデは正面に見える猿毛山の北西側山腹に開かれていたようだ。急な斜面がひとつだけだったという記録を見たことがある。いまは杉の植林に覆われていて、木々の合間にわずかにリフトのワイヤーが残っているのが見えるくらい。正面の稜線の向こう側には冬鳥越という歴史あるスキー場があり、リフトの降場から反対側に見えたという。かつて蒲原鉄道(1985年に廃線)の駅前にあった冬鳥越にくらべれば、こちら猿毛岳スキー場は公共交通機関(蒲原鉄道の七谷か狭口あたりか)から降りてかなり歩かねばならず、アクセスには難があったようだ。
(左)高い煙突が残るロッジの廃墟。(右)猿毛岳への登山道を示す標識がある。
ロッジから少しくだると、猿毛岳の登山道を示す標識が立てられている。その登山道とは逆に林道を少し北に進むと、右手の植林の中にリフトの残骸が残されていた。すっかり錆び付いて、はずされた椅子が脇に重なって置かれている。ワイヤーも錆びたまま、杉林の中でただ山頂を目指している姿が、いまとなっては寂しさを誘うだけだった。
2010年2月には猿毛岳で遭難事故が発生して、それが契機であらためてこの山が話題になったりした。猿毛岳スキー場は1960年(昭和35)1月に新潟交通によって開設され、3年後の1963年(昭和38)12月にリフトの設置などを含む整備が完成。リフト1基、ロープトウ1基、夜間照明、スキーロッジの施設を整えた。積雪はそれほど多くはなかったのか、雪不足に悩まされ続けたようだ。営業をやめた年代ははっきりしないが、1980年頃(昭和50年代)ではないだろうか。(現地訪問:2010年12月)
杉の植林の中に錆びたリフト施設を見つけることができた。
ラベル:猿毛岳スキー場