(左)スキー場入口には看板が残されている。左はスキー場のロッジ。(右)尾根コースの中腹からロッジや下部の斜面を見下ろす。会津盆地の広がりを見渡すことができる。
会津盆地の西部に位置する会津坂下(ばんげ)町。以前、何かのTV番組でこの町が取り上げられたときに、ひとつだけ記憶に残ったのが「坂下の馬鹿三里」という言葉。会津若松・喜多方・柳津・会津高田といった会津の主要都市までの距離が、いずれも三里(12km)であることからそう呼ばれた。いずれにしても、古くから交通の要衝であったことは間違いない。町の西側には会津盆地の西端を区切る丘陵地が南北に走っている。その丘陵地の東斜面にあったのが、会津坂下町営スキー場。町の中心部からも車で北西に10分ほどの距離である。
1976年にオープン、2006シーズンを最後に営業休止となった。会津盆地や磐梯山などを一望できる立地でもあり、最盛期の90年度には39,000人を超えるスキー客でにぎわった。しかし、2006年12月の新聞各紙の報道によれば、「スキーブームの衰退やバブル崩壊などの影響で客足が落ち込み、05年度にはピーク時の5分の1以下の約7,400人にまで激減。昨年度は約880万円の赤字となっていた」という。「積雪量が減ったものの、人工降雪機がないために、常時スキー場を良好な状態に保てないことも営業停止に踏み切る一因となった」とも記されていた。
(左)ロッジ前からゲレンデを見上げる。(右)第4リフト上部から乗場付近を見おろす。
「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」には「磐越道・会津坂下ICからは5分でアクセスはバツグン。初級から上級までの5コース。最大斜度29度。コンパクトながら行き届いた整備がされ、ファミリーや初心者に最適。スクールなし。ナイター毎土・日・祝とその前日、21時まで。リフト シングル2基、ロープトウ2基。1日券1,850円、11回券500円」と紹介されている。最後の頃にはロープトウ2基だけの営業になっていたようだ。
会津坂下ICを降り、国道49号から山際を走る道に入れば「糸桜里(しおり)の湯 ばんげ」への案内看板が目立つ。ときには「会津坂下スキー場」の名もまだ併記されていたりする。左の山中に上っていけば、道の左に温泉施設、右側はスキーロッジの向こうにゲレンデが広がっている。ロッジの傍らには圧雪車も置かれていた。リフト乗場は少し斜面の上部にあるのが見える。リフト施設は草に飲み込まれそうに見えるが、搬器をはずされただけで鉄塔やワイヤーは残っている。
そのリフト乗場までのロープトウ、そしてレストハウスから下にある斜面のロープトウも装置は残されている。営業休止するものの教育目的に限って開放するとされていたから、いまもロープトウくらいは動かすことがあるのかもしれない。見上げるゲレンデは草木に覆われ始めているが、3本のコースがあったことが見て取れる。思っていたよりも、奥行きのあるゲレンデのように感じた。
一番右手の尾根につけられたコース跡を登れば、最上部に行けそうだ。登り始めると真夏の日差しが照りつけ、汗が滴り落ちるものの、ひとしきりすれば磐梯山や会津盆地の眺めが得られるようになる。最上部には第4リフトの降り場があった。リフト施設はそのままだが、深い笹に覆われている。そのままリフト沿いにくだってみようとヤブ漕ぎを試みたがあっさり敗退。再び屋根コースの展望を眺めながら、ゲレンデ下までくだった。(現地訪問:2011年8月)
(左)山頂部に残っていた第4リフトの降り場。
ラベル:会津坂下