(左)国道400号からの分岐箇所には案内板が残っていた。(右)川の対岸から見たゲレンデ全体。
福島県昭和村といっても、どこにあるかわからない人が多いのではないだろうか。私にしても南会津のいくつかのスキー場との位置関係はどうだったか、という程度の認識。ただ、柳津方面から南下して村内に入れば、只見川の支流・野尻川に沿って田畑が広がり、その両側を丘陵が取り囲むほのぼのとした風景の村であった。「からむし織の里」というのが、キャッチフレーズのようだ。からむしという植物の皮からとった繊維で織りあげた織物が、この地独特のものらしい。
昭和村営スキー場は、立地から考えても地元の人々のためのスキー場だったのだろう。国道400号から分岐する場所には、いまも「昭和村営スキー場」の案内板が掲げてある。川を渡り、ゲレンデ直下まで車道は通じているが、ゲレンデには少し坂を登らねばならない。坂道を上った場所には、朽ちたレストハウスの建物があり、その向こう側の草むらの中にリフトのコンクリート部分が残っていた。リフトはゲレンデトップに向かって左手に設置されていたようだ。見上げる斜面は草木に覆われはじめている。ねじれのある狭い幅のコースが見て取れるが、これは上級者向きのコースだったのだろう。
(左)レストハウス横からゲレンデを見上げる。(右)リフト施設のコンクリート部分が残されていた。
「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」には「福島県の西部、新潟県寄りの標高700mの権現山北斜面に開かれたファミリースキー場。地域の人々の憩いの場として人気がある。リフト1本に初級者向きと上級者向きの2コース。最大31度の変化に富んだ斜面は、リフト待ちもなく存分にたのしめる。リフト シングルリフト1基 ポーラスター1基」と紹介されている。営業開始は1981年。2003シーズンを最後に営業を休止した。
アクセスは「鉄道 只見線会津川口駅からバスで30分 クルマ 磐越道・会津坂下ICからR252、会津川口からR400を昭和村方面へ」と記載されている。一日数本しか列車のない只見線は論外として、会津坂下からもローカルなスキー場のある柳津や金山を通り過ぎて、やっと到達することになる。関東方面からも高杖・台鞍山あたりよりも奥まった印象だ。そう考えると他の地域の人が訪れるようなゲレンデではなかったと思われる。実際、現地を訪れたときには「さてどういうルートで帰ろうか」としばらく悩むことになった。(現地訪問:2011年8月)
(左)ゲレンデをやや上がった箇所からレストハウスとリフト乗場を見おろす。