(左)1988シーズンの万座温泉スキー場のゲレンデマップには「今シーズン、熊池リフト・ヒュッテは営業休止」と書かれている。(右)熊笹に覆われた斜面を中腹から見上げる。
11月の山は美しい。雪が来る前の一瞬の輝きを見せてくれるように思う。紅葉シーズンの秋晴れの休日、車のラジオからは高速道路下り線の渋滞情報が流れている。万座ハイウェイを万座温泉に向けて走っていくと、やがて路肩には薄い積雪が見られるようになった。志賀草津道路や上信スカイラインは数日前から、降雪により通行止めとなっている。だから、万座ハイウェイをたどる破目になったのだが。亜高山の山々も冬の装いを整えようとしている。
「万座温泉スキー場・朝日山ゲレンデ」の項に熊池ゲレンデについてのご指摘をいただいた。思い当たるふしがあって、あわてて地図などを引っ張り出してみた。登山地図(1990年代のもの)にも、国土地理院の地形図(1980年代のもの)にも、プリンスゲレンデの南側の奥万座川の谷を隔てた所にリフトの記号が残されていた。さらに1988シーズンに万座を訪れたときに入手したゲレンデマップには、左下に熊池ゲレンデが描かれ、「今シーズン、熊池リフト・ヒュッテは営業を休止させていただきます」と記されている。ということは、その前年あたりまでは営業をしていたのではないだろうか。「失われたロープウェイ」サイトにある1969年のゲレンデマッブには、リフトの長さ560mとあるので結構滑り応えがあるゲレンデではなかったかと思われる。
万座ハイウェイが万座温泉に到着する1kmほど手前、左手に入って行くのが熊池ゲレンデへのアクセス道だったと思われる。付近は2001年に起きた地滑りの復旧のための治山工事があちこちで行われている。施錠されたゲートから歩き始める。少し下ってから平坦になった尾根の突端のようなところに水道施設の建物があり、その付近がリフト終点だったと思われる。しかし、付近にスキーに関係する痕跡は見あたらなかった。
(左)架線が続く斜面。これに沿ってリフトが架けられていたのではないかと思わせるが。(右)斜面から見下ろすと下のほうに熊池の水面が見える。
そこから下方をのぞくと熊笹に覆われた斜面が続いていて、それがゲレンデの跡ではないかと思われた。その斜面を縫うように新しい林道が、熊池までつくられている。背の高い熊笹に覆われ新しい林道によって分断されているため、ゲレンデだった当時の様子ははっきりとわからない。斜面を下っていくと雑然とした感じの熊池のほとりにたどり着いた。地滑りの影響で倒木や岩が池やその周辺に押し寄せているため、かつては「池めぐりコース」を形成していた景観も台無しである。
リフトの乗場やヒュッテもこの池の畔にあったはずだが、その痕跡を見出すことはできなかった。見上げるとゲレンデだったと思われる斜面はかなりの斜度に思えたが、リフト沿いに真っ直ぐのコースだったのかはよくわからない。そのずっと右手に目をやると地滑り跡の斜面があった。こちらは地形から推測してゲレンデでではなく、単なる地滑りの跡のようだ。その後、プリンスゲレンデに出て、その上部から熊池ゲレンデを遠望しようとしたが、どうやら谷を隔てた前方の尾根のわずかに反対側にあたるようで確認はできなかった。周囲の稜線を見渡すと、すでにうっすらと雪をまとっていた。冬はもうそこまで来ているように思えた。(現地訪問:2012年11月)
左)地滑りのため熊池周辺は倒木に覆われている。(右)熊池から斜面を見上げる。左の熊笹の斜面にリフトがあったと思われる。右の斜面は単なる地滑りの跡か?
いよいよシーズンの始まりですが、今シーズンもよろしくお願いします。(でも雪が降る時期の追憶ゲレンデ探索はやりにくいか)
熊池ゲレンデはレンタルゲレンデだった時期があるんですね。情報有難うございます。