(左)魚野川に架かる根小屋橋からのぞむ。前方の丘陵の中央部が永林寺スキー場だった。(右)南東側から見上げたゲレンデ。赤いドーム屋根の小屋あたりまでがゲレンデだったらしい。
4月とはいうものの、越後の山里では田畑は未だ一面の雪に覆われていた。春の気配は感じられるけれど、花の季節はまだもう少し先のことで、遠く越後三山は残雪に輝いている。東京では桜が満開だと伝えられても、それはどこか遠い世界の出来事のように聞こえる。
北魚沼郡堀之内町。いまは合併により魚沼市の一部となっている。むかし、上越線の在来線急行で何回かこのあたりを通った記憶では、湯沢・石打・六日町などスキー場が林立する華やかな地域を通過した後だからだろうか、魚野川に沿う谷も狭まり何となく寂しげな雰囲気を感じたものだった。
そんな堀之内にスキー場があったことを知ったのは「観光と旅16 郷土資料事典・新潟県(人文社 昭和45年6月5日初版 昭和50年4月15日改訂版)」による。同誌はその永林寺スキー場について、以下のように紹介している。「曹洞宗の名刹鉢倉山永林寺の裏山一帯で、スロープの変化は初中級者に向いている。永林寺は、日本育英友の会・文部省・県の青少年野外旅行活動の宿泊に指定されており、四季それぞれ野外のレクリェーションを楽しむ青少年で賑わっている。境内の前方には魚野川が流れ、銀蛇の彼方には越後三山がくっきり浮かび、きわめて眺望に優れている。スキー施設としては、150mのロープウェー(注:ロープトウのことと思われる)と民宿の用意がある。堀之内駅の北約1km 徒歩20分。」
堀之内の中心街から魚野川に架かる根小屋橋を渡り、細い道を入って行くと永林寺の前に出る。杉林に囲まれた佇まいは、名刹というに相応しい雰囲気がある。その右手裏に樹林の少ない丘陵があり、最上部には四阿らしき建物が見える。その一帯がスキー場だったと想像がつくものの、斜面をいまは関越道が横切り階段状に整地されていて、どんな斜面だったのかはいまひとつ想像がつきにくい。右手に雪の残る斜面があるが、そちらの緩斜面はゲレンデの面影を残しているように感じられた。
(左)永林寺の脇から見上げた斜面。関越自動車道が横切っている。(右)永林寺。
少し離れた住宅の前で、雪を片付けていた小父さんに声をかけてみた。「いまは高速道路が横切ってよくわからなくなった」といいながら、永林寺右手奥の斜面がスキー場だったことを教えてくれた。正面はけっこう急な斜面だったらしい。ロープトウがあったけれど、よく故障したようだ。82歳になるという小父さんは若い頃には、そのゲレンデでよくスキーをしたという。「冬にはスキーぐらいしか楽しみがなかったからね」と笑った。(現地訪問:2014年4月)
アクシオムだって、元をただせば権現堂山の麓に有志がロープトゥをかけたのが始まりだといいますから…