(左)「狐の嫁入り屋敷」の庭にある行列を模した人形。(右)ハーバルパーク最上部には体験工房などの建物。
新潟市から南東方向、阿賀野川を遡った山間部にある津川町。いまは、鹿瀬町・三川村・上川村との合併により阿賀町となっている。古くは会津藩の領地であり、街中の道路がかぎ型に折れ曲がるなど重要な拠点であったことをうかがわせる。津川といえば思い起こすのが「狐の嫁入り行列」。麒麟山の狐火を起源とする民話をもとに、毎年5月3日におこなわれる祭には住民の10倍にも及ぶ観光客が訪れるという。また、町内には「狐の嫁入り屋敷」があり、行列のジオラマなどが展示されている。
そんな津川の町の背後にある芦沢高原。磐越道・津川ICから南側に登った山腹に開けている。この芦沢高原にスキー場があったことは「スキー天国にいがた(1975年12月10日・新潟日報事業社)」に記載されている。「津川町を中心に点在するスキー場のひとつで、スキー場施設の少ない下越地方の人たちには格好のゲレンデである。歴史も古く、家族連れに適した初中級向きのスキー場でいつも明るい雰囲気がただよっている。鉄道:新潟から磐越西線1時間30分津川駅下車徒歩40分。施設:食堂・休憩所1箇所」とある。
また、「観光と旅16 郷土資料事典・新潟県(人文社 昭和45年6月5日初版 昭和50年4月15日改訂版)」では、芦沢高原について「出角山(485m)の中腹の高原で、眼下に津川平野がひろがり、常浪川と阿賀野川が合流している。高原には芦沢高原寮があり、ベランダに立つと飯豊山をはじめ県境にそびえる山々が美しく展開している。夏には多くの若者たちがテントを張って燃えさかるキャンプファイヤーを囲み、冬はなだらかなスロープのゲレンデで雪煙りをあげながら滑降を楽しんでいる」と紹介されている。
(左)ハーバルパークの下部から斜面を見上げる。(右)ハーバルパーク上部から斜面を見おろす。
現在、芦沢高原の最上部には「ハーバルパーク」が整備されている。園内にはハーブをはじめ季節ごとの花が咲き、体験工房ではハーブ石鹸づくりなどの体験を楽しむことができる。最上部の建物の前で、ハーバルパークの仕事をされている男性に尋ねてみる。彼の話では、まさにこのハーバルパークの斜面がスキー場の跡地だという。ただかなり整地されたので当時の斜面の面影はあまり残されていないようだ。子どもの頃、自分たちで雪を踏んでゲレンデを整備し滑ったという。ロープトゥぐらいの施設があったかどうか、記憶は定かではなかった。昭和55(1980)年頃はここで滑っていたという。ゲレンデ最下部はハーバルパークの敷地を過ぎて、その下のいまはテニスコートになっている場所あたりまでだったという。
斜面は適度な傾斜で、快適なスキーが楽しめたと思われる。やはり、もっぱら地元の人々のためのスキー場だったのだろう。ゲレンデ下部を見やるとかつては津川の町や阿賀野川まで見渡せたのかもしれないが、いまは樹林が育って視界を遮っていた。ハーバルパークには美しい花が咲き乱れていたが、天候が思わしくないせいか訪れる人はあまりいないようだった。(現地訪問:2014年6月)