(左)リフト乗場にあったゲレンデマップには、あだたらエクスプレスに沿うコースは「今期閉鎖」と表示。(右)子ども連れが多い印象を受けた。
1990年2月に職場の仲間と奥岳温泉に宿泊して、あだたら高原に滑りに出かけた。ちょうど「あだたらエクスプレス」というゴンドラが登場して、スキー雑誌などにも大きく取り上げられたシーズンだった。それまであまり知名度が高くなかったこのスキー場も、このゴンドラの登場によって一気にメジャーなスキー場の仲間入りをしたかに思えた。
この年はあいにく雪が少なく、あだたら高原のゲレンデも至るところに、草や土が顔を出していた。あだたらエキスプレスで上った最上部からのコースは急斜面が多くて、雪の付きがよいとはいえず、結構滑るのに苦労した記憶がある。その後も夏に安達太良山に登山する際には、この「あだたらエクスプレス」のお世話になった。
「日本のスキー場・東日本編1991(山と渓谷社)」によれば「昨シーズン、リフト名もコース名も一新してファッショナブルなイメージのスキースポットに生まれ変わったあだたらスキー場。今シーズンは'90シーズンのゴンドラリフトの新設にともなって登場したハリケーンスラローム上部とミルキーウェイのコース整備が行われ、いずれも滑りやすくなった」と紹介されている。当時はゴンドラのほか、ペア3基、シングル2基のリフトを備えていた。現在はクワッド1基、ペア3基。東北道・二本松ICからは16kmのアクセスである。
(左)あだたらエクスプレスの乗場のシャッターは閉まっていた。(右)ゴンドラのワイヤーには搬器は取り付けられていない。
2013年11月、あだたら高原スキー場の公式サイトに「あだたら高原スキー場2013-2014スノーシーズンのゴンドラリフト運行休止について 今シーズンは諸般の事情でゴンドラリフト『あだたらエクスプレス』の運行を休止いたします」と掲示された。2015シーズンも引き続き、スキーシーズンの運行はストップのままだ。ただし、4~11月は登山用として運行されている。
あらためてトップシーズンにあだたら高原を訪れてみる。あいにくと雪が激しく降り続き、「あれが安達太良山、あの光るのが阿武隈川……」という智恵子抄に登場する風景を楽しむことはできない。年末の休みでもありファミリー層を中心にスキー場は賑いを見せている。以前のイメージに比べ、圧倒的に子ども連れが多く、そこにターゲットを絞ったことが見て取れる。ゲレンデ最下部のゴンドラ乗り場のシャッターはおろされていて、ゴンドラが走らないワイヤーが虚しく空中を横切っていた。あだたらエクスプレスの運行休止が、この間のスキー場をめぐる情勢の変化を物語っているように感じられた。(現地訪問:2014年12月)
5年前に行った時には、息子の姿が見えなくなった…と思ったらボードを担いで尾根筋をゴンドラ山頂駅まで登行し、駅舎前から手を振っていたのには驚きました。シールを貼って登行するつもりなら、昔のゴンドラコースを滑るのは可能と思います。雪が豊富にあれば…ですけどね。