(左)町内の各所には「柳津温泉スキー場」の案内掲示が残っている。会津柳津駅前の地図にも。(右)只見川対岸から見たゲレンデ全体。センターハウスより上の第2ゲレンデに屈曲シュレップリフトがある。
柳津温泉スキー場は前々から気になっていた。それは、途中で屈曲する珍しいシュレップリフトがあったからだ。シュレップリフトはJバーリフトとも呼ばれる。「下るよりも上る方が難しいスキー場」「リフトに乗るためだけに来る人もいるスキー場」などとも呼ばれていた。早くそのシュレップリフトに乗りに行かねばと思っていたのだが、最近になってネット上の掲示で今シーズンからのクローズを知ることとなった。やないづ振興協会のサイトには「柳津温泉スキー場はクローズとなりました。長きにわたってご愛顧頂きまして誠にありがとうございました。」と掲示されている。
1979~81年にかけて整備され開業したというから、30年あまりの歴史だったことになる。まさにバブルの時期にあわせるかのような開業時期であり、ピーク時には年間1万人の利用があったという。「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」には、「柳津温泉がベース。温泉街からはわずか。宿泊は西山温泉街も利用できる。コースは3本、ナイターは木~土曜日。レンタルあり、スクールなし」と紹介されている。リフトはシングル2基と記載されているが、うち1基は上記のシュレップリフトである。最大斜度は35度、最長滑走距離800m。
ゲレンデの構成も少々変わっていた。只見川に沿う道の脇に駐車場と登行リフト的な第1リフト(シングルリフト)乗場がある。そのリフトには中間乗場があり、中間乗場から上の部分は第1ゲレンデとなっていた。リフト終点にはセンターハウス。そして、そのセンターハウスの上にシュレップリフトが架かっていた。このシュレップリフトは途中で右に屈曲している。第2ゲレンデがそのように曲がっているので、それにあわせて曲げたものと思われる。この屈曲点のロープの取り回しは複雑のようで、詳しくは索道関係のサイトを参照いただきたい(→「索道観察日記」「別冊つなわたり/ロープウェイに乗ろう」)。
(左)第1リフト乗場。道を跨いでゲレンデへとワイヤーが伸びている。(右)なかば雪に埋まった第1リフト乗場のゲレンデマップ。上部だけ見えている。
柳津町については、会津の盆地から只見川に沿って少し山間に入ったあたり…という程度の地理的な感覚しか持ち合わせていなかった。しかし、観光ガイドなどによると福満虚空藏菩薩圓藏寺の門前町として栄えてきたという歴史が記されていて、少し印象を改めることになる。会津坂下方面から国道252号をたどり中心街に入れば、それなりの温泉街が形成され道沿いには名物の「あわまんじゅう」の看板があちこちに見られる。「赤べこ発祥の地」の掲示も見られるが、これも圓藏寺の歴史に由来するものだという。
そんな中心街から只見川を挟んだ対岸を見やれば、柳津温泉スキー場のゲレンデのほぼ全体を見渡すことができる。ゲレンデは深い雪に覆われている。上部ゲレンデのあたりまで上っていく林道があるはずだが、除雪されているはずもなく、シュレップリフトをはじめとする上部のようすを近くで確認するすべはない。雪のない季節に再訪したいと思う。ただ、シュレップリフトがそのままの状態であり、支柱やワイヤーも撤去されてはいないのが遠目にも見てとれた。
只見川沿いの第1リフトの乗場に行ってみる。リフト乗場は深い雪に覆われ、リフト券売場の小屋やゲレンデマップなども雪に埋もれている。リフトのチェアははずされているものの、ワイヤーは道を跨いでゲレンデへと続いていた。リフト乗場のすぐ後ろには、奥会津の雪深い山々から水を集めた只見川が滔々と流れていた。(現地訪問:2015年2月)
(左)第1リフト乗場のリフト券売場。