(左)上夜久野駅東側の踏切から。左手の小丘陵にゲレンデがあった。(右)駅北側から。前方の斜面がゲレンデ。
1924(大正13)年頃の開設で、当時は駅前ということもあって、多くのスキーヤーで賑わったという。道路網の発達などで他のスキー場へと客が移り、閉鎖されたようだ。閉鎖年月については、現在までの調査でははっきりしていない。
無人駅の上夜久野駅北側にある駅前広場に立つと、駅舎と島型ホームの向こうに斜面が横に広がっている様子がわかる。駅構内のすぐ南側である。ここがスキー場だったのだろうか。駅の近くで犬の散歩をしている男性に聞いてみると、まさに駅南側の現在は樹林が覆っている斜面がゲレンデだったという。
最盛期には第1ゲレンデ・第2ゲレンデなどいくつもゲレンデがある大規模なスキー場で、大いににぎわっていたという。その頃のことなのでリフトなどはなかったようだ。見上げると思ったよりも斜度は急なところがあり、一方、あまり長い距離は滑れなかったようなゲレンデ構成と見えた。
(左)南側の少し上ったところから駅を見る。(右)道の駅の広場から駅方面を見おろす。
車でこの斜面の上部へと上がってみる。上部は「道の駅(農匠の郷) やくの」として整備されて、日帰り温泉や各種体験施設・郷土資料館・売店・ベゴニア園・花広場などが点在している。一番北側の広場の一角からは木の間越しに、ちょうど特急列車が通過していく上夜久野駅のホームが見下ろせた。下から見たのと同様、けっこう急な斜面だと感じた。
まさに駅前ゲレンデとして人気を誇っていたようだが、車でスキーに出かける時代に推移したことも重なって客足が遠のいたのではなかろうか。国道9号・山陰本線という幹線交通路が通っているものの、周囲はのどかな小盆地の風情である。上夜久野駅が無人駅になったのは、1984年のことであった。(現地訪問:2017年3月)
(左)斜面の上部は、道の駅として整備されている。