2017年08月26日

花背スキー場(京都市左京区)

一日数本の出町柳駅発・広河原行バスには、登山者など意外と多くの乗客があった。北大路から堀川通・上賀茂を通り、鞍馬の細い道を北上していく。花背峠へと登っていく急坂急カーブの道には、車両行違いのための係員が配置されていた。北山杉の美林を見ながら、花背峠を越えれば別所川に沿う谷へと下っていく。茅葺屋根も見られる風景は、外国人観光客で賑わう京都市街とは別世界のようである。

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(左)「花背高原前」バス停。前方に花背小中学校の旧校舎。(右)ゲレンデ下には貸スキー兼レストハウスの建物。右手上部にゲレンデが広がる。

この花背別所町にあったのが花背スキー場。1929年に開業、1964年に経営主体がかわり、1989年を最後に廃業。最盛期にはシーズン5万人、土日には3,500人もの集客でリフト待ち30分という時代もあったという。しかし廃業直前は雪不足に悩まされ、営業日数もごく短かったようだ。全長200mのシングルリフトが1基。日本で3番目に古いスキー場という記録も見られる。

1時間強バスに乗車して「花背高原前」下車。目の前に花背小中学校の旧校舎がある。周囲の民家には空家も多い様子。西の山中に向かう林道を歩くと、10分もかからずに花背スキー場のゲレンデ下に到着する。ゲレンデ下には貸スキー兼レストハウスの建物が残っている。室内には食事メニューの掲示が残っているのが見えた。数年前まではその右手(北側)にも別の建物が残っていたらしい。すぐ脇にはヒュッテなどの位置を示す案内板が、朽ちながら残っている。

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(左)ゲレンデ下部に残る案内板。(右)最下部からゲレンデを見上げる。

見上げるゲレンデは快適に滑れそうな中斜度の東向き斜面。背の高い草がその大方を覆っている。少し登ったところには、リフト乗場とレストハウスらしき建物が見える。錆び付いたリフト設備には、まだワイヤーが残っていて前方へと延びている。その先は樹林の中に消えていて、支柱やリフト上部の様子などは知ることができなかった。

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(左)錆びたリフト設備。手前にTバーリフト。(右)ゲレンデ最下部を見おろす。

リフトのすぐ脇には比較的新しいTバーリフトの装置が置かれている。廃業後にプライベートゲレンデのようなかたちで使われてた(いる?)という情報もあるので、その名残なのかもしれない。ゲレンデ直下には駐車場スペースがあまり見当たらなかった。林道からの途中左手(南側)に広い草地がいくつかあるので、そこが駐車場として使われていたのかもしれない。

なお、この花背スキー場に隣接して、1984~1989年に営業した花背大平スキー場があったという。詳細はよくわからないが、もうひとつ南側の谷の採石場上部の斜面(東向き斜面)にあったのではないかと推測している。

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(左)林道の前方に花背大平スキー場跡地(?)。花背スキー場のもうひとつ南側の谷。

京都市街地から1時間程度の都市隣接の立地。アクセス道路の厳しさにもかかわらず多くのスキーヤーが押し寄せた時期を、いまは回想するしかない。積雪の減少は、こうしたスキー場を閉鎖に導くとともに、スキー人口の減少にもつながっていったのではないだろうか。(現地訪問:2017年8月)

*「花脊」が正しいと思われるが、近年では「花背」が用いられる方が多いようす。本稿では「花背」で統一した。
この記事へのコメント
私の拙い頁です
http://outdoor.geocities.jp/odekake320/hai.html

いつも楽しみに拝見しております。
ハナセ、比良山ほか、いい画像・文章があったら転載利用して下さいませ。

Posted by yukiyamania at 2017年08月26日 23:39
yukiyamaniaさん コメントいただき有難うございます。廃スキー場についてのページ、参考にさせていただきます。
Posted by 急行野沢 at 2017年08月27日 14:31
何となく検索してたらここにたどり着きました。
いやぁ、懐かしいです。
現在50歳になった私ですが、小学校時代よく親に連れられて花背スキー場に行きました。
雪不足で閉鎖して暫くして私も大人になった頃、友達と雪遊びやスノボのジャンプ台を作ったりしに行ってました。
近くの小学校の生徒用(?)にTバーリフトが設置されてからは「広河原スキー場に行って下さい」と言われました。

花背の近くの大平スキー場にも小学校時代に1度行った事があります。
ゲレンデの下の方(?)に大岩があって、当時オーナーのおじさんが「10年掛かってでも撤去する」って息巻いてましたね。

花背から更に奥に進んだところには現在も営業してる広河原スキー場(積雪量によっては営業してない年もあり)がありますが、その奥の佐々里峠を上ったところにも佐々里スキー場と言うのがありました。
今でもキャンプや釣りが出来る施設が残ってたと思いますが、そこを上がっていくとスキー場の跡地が残ってますよ。
Posted by いかB at 2018年02月06日 14:04
こんにちは、初めまして。
花脊大平スキー場の情報を探して、こちらにたどり着きました。
スキー場と林道の相関地図も、とても分かりやすくて助かりました。
詳しい情報をありがとうございます。
(花脊大平スキー場に至る林道は「杉谷線」という名前のようです)。
(花脊スキー場の近くの林道は「別所峰道線」ですね、参考までに…)。
Posted by 元巫女 at 2019年08月19日 19:15
初めまして、自称スキー場マニアです。

花背スキー場懐かしいです!
幼い頃に一度だけ父に連れて行ってもらいました。
食堂の白熊ってのがゲレンデ脇に残ってた時代に再訪し、思い出に浸ってた時もあります。
高級旅館美山荘のオーナーが運営されていたスキー場でした。
私の遠い遠い親戚です。

広河原スキー場より更に奥にある佐々里スキー場へも是非行ってみて下さい。
現在はササリナチュラルランドってキャンプ場になっています。
手前の民宿ハリマ家で詳細が聞けますよ。

いつも記事を楽しみにしています。
Posted by シャバーニ at 2022年07月15日 01:46
懐かしいです。47前初めてスキーを滑ったのが花脊スキー場でした。
Posted by たーこ at 2022年09月21日 16:41
はじめまして。貴殿と同じくスキー場を愛する者です。いつも楽しく拝見しています。小生思い出の花背スキー場懐かしく読ませて頂きました。さらに北に佐々里スキー場もあったので、是非とも取材及び記事にして頂けると幸いです。
Posted by コージ at 2024年10月05日 12:58
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