2017年09月26日

高尾原スキー場(広島県庄原市)

芸備線の備後落合行・単行気動車を、終点目前の道後山駅で下車したのは私ひとりだった。秘境駅とも呼ばれるため、どんな山中かと思っていたけれど、周囲を見渡すと数軒の民家もあり少々安堵する。中国山地の穏やかな山並みがどこまでも続いている。

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(左)芸備線・道後山駅で下車。単行気動車が一日3往復停車するのみ。

かつては急行列車も走っていたが、現在この区間を走る列車は一日3往復のみ。列車が去ってしまうと物音ひとつしなくなる。山陽方面に所用で出かけた機会に、この道後山駅前にあったという高尾原スキー場の跡を訪れようとやってきた。現在は片面ホームだけの棒線駅だが、以前は交換駅であり、対面式ホームの痕跡が認められる。駅舎側から線路を挟んだ西側に、スキー場とわかる斜面が広がっているのが見て取れた。

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(左)ホームからゲレンデ跡を見る。快適そうに滑れそうな斜度に見える。道路工事が進められていて、重機などが周辺には置かれていた。(右)無人の改札ラッチから、一段高いホームの向こうにゲレンデ跡が見える。

建て付けの悪い扉を開け閉めして駅舎内に入ると、高尾原スキー場があったころの写真も掲示されている。駅舎を出て左へ、踏切を渡ってゲレンデ下まで行ってみる。斜面下は道路工事が進められている。休日のため作業はおこなわれていないが、周辺にはいくつも重機が置かれている。ゲレンデ跡にも「立入禁止」の標識がある。

数年前までゲレンデ下にあったというスキーハウスは解体され、その場所には材木が置かれたり、また道路拡張に使われているようだ。また、切符売場の小屋も残っていたようだが、その痕跡もわからないほど。もう少し早く訪問したかったと後悔する。

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(左)周辺は道路工事が進められていて、ゲレンデ斜面も立入禁止。(右)ゲレンデ下から道後山駅を見おろす。

見上げる東向き斜面は、まさにスキー場に適した斜度であるが、草地の斜面だけではいくら何でも狭すぎる。Tバーリフト(多いときは3基、最終段階では1基)だけだったとはいえ、滑走距離は500mほどあったようだから、現在は樹林が茂っているもっと上部までゲレンデは広がっていたのだろう。

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駅舎内に掲示されていた写真より。(左)ゲレンデ下にあったスキーハウス。(右)切符売場の建物か。いずれも現在は解体されている。

「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」には「Tバーリフトを利用した3コースのコンパクトなゲレンデ」と紹介されている。2011年をもって閉鎖となった。かつては臨時スキー列車も運転されていたという。ローカル鉄道とローカルゲレンデ、いずれもかつての賑わいを想像するしかない。これを逃すと帰れなくなる、40分後にやってきた新見行に乗り込んだ。(現地訪問:2017年9月)
posted by 急行野沢 at 22:00| Comment(1) | 近畿以西 営業休止のスキー場 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも楽しく拝見させて頂いております。

前から思っておりましたが、文章が詩的でかっこいいですね。

私は九州在住なのですが、福岡の雷山スキー場に是非来てみて下さい。山頂まで来るまでいけますのでネタになるかと思います。
(アクセスの悪さは高レベルです。)
Posted by kondou at 2017年09月28日 12:08
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