(左)国道沿いの案内板。(右)ゲレンデ下部の駐車場付近からリフト乗場を見る。
本年2月、雁が原スキー場の経営主体が福井地裁に自己破産を申請したことが報じられた。2020シーズンは暖冬による雪不足でスキー場をオープンできず、事業継続を断念したもの。社長は「続けたいが温暖化が続く中での運営は厳しく、苦渋の決断。スキー場がなくなるのは寂しい」とコメントした。
1956年にオープン。福井県内のスキー場としては六呂師高原スキー場とともに草分け的な存在。ピークの1996年には約13万人が訪れた。2019シーズンは積雪が少なく2週間程度しか営業できず、2020シーズンも福井県内の小学校40校以上からスキー教室の予約も入っていたが、積雪が見込めず営業を断念していた。
(左)ゲレンデ下のリフト乗場。右にクワッド、左にパラリフト。(右)ゲレンデ下部のロッヂ。
「オールスキー場完全ガイド2000」(立風書房)には以下のように紹介されている。「加越国境に連なる法恩寺山の長大な裾野に開かれ、斜度10~21度のゆるやかな斜度の続くゲレンデはすべて初中級向きで、家族連れには喜ばれている。下から第1ゲレンデ、第2ゲレンデ、ベース地点から見えない第3ゲレンデに分けられる。宿泊には勝山市か福井市を利用するシティゲレンデ。日帰りが中心で、ナイターがにぎわう」
勝山市中心街から車でほんの数分。裏山のような場所にある。国道157号から右折する場所にある「雁が原スキー場」の案内板はそのまま。アクセス道路を数百メールで、もうゲレンデ下部に至る。広大な駐車場が用意され、正面にリフト乗場、左手に雁が原ロッヂの建物。リフトの支柱は真新しく、最近整備されたように見える。リフト乗場左側には3本ほどのコースがあり、意外に規模が大きかったことを思い知らされた。
(左)ゲレンデ中間部から下部を見おろす。リフトの支柱が並んでいる。(右)上部のゲレンデ。第3リフトは撤去済。
一方、ゲレンデ脇から中間部に入ってみると、クワッドリフトやシングルリフトの支柱がそのまま立っている。リフトはいずれも搬器をはずされた状態。上部に向けてゲレンデ跡があるけれど、そこにあった第3リフトはずいぶん前に撤去されらしく見当たらない。眼下には勝山の盆地に恐竜博物館の建物が浮かんでいるように見えた。
ゲレンデの標高は220~420mで、温暖化が進む現在は積雪が厳しいだろう。全盛期にはリフト5本(クワッド1本、シングル4本。上部の第3リフトはその後廃止)、最長滑走距離1,500mの規模を誇りコースは5本あり、ナイター施設も備えていた。最大斜度21度で初中級者向けであり、キッズ専用のソリゲレンデも併設しファミリー層を中心に利用者を獲得していた。しかし、近年はスキー人口の減少や少子化の影響で客足は鈍化していた。
(左)恐竜博物館付近から。右手に雁が原のリフト上部。左奥はジャム勝のゲレンデ。標高の違いは明らか。
夏季は駐車場をモータースポーツ場「ジムカーナ」とするほか、ドローンの講習場として活用。老朽化した設備の修繕も実施したが、営業を断念する事態となった。この先にはスキージャム勝山があり、客層は少し違うだろうが、積雪も多く規模も大きいジャム勝に人気を奪われていたのかもしれない。地域住民に親しまれたスキー場が、またひとつ姿を消すことになった。(2020年7月)
第3リフトがありジャム勝が無かった頃に滑走したことがありますが、スキー流行全盛期であってもコースレイアウト的に牧歌的な感じだったと記憶しています。
上部コースは林間コース的な雰囲気で斜度もなだらかなので、縮小してもそれほど客足は変わらなかったと思います。
当時の中上級者は157号で白峰に行く感じでした。
ジャム勝ができて大きく影響があったのは白峰やその奥の白山スキー場群で、ファミリー層は有料道路代を払う必要のない近い雁が原で十分なんですが、雪が無ければそれも叶わないですね。