(左)ゲレンデ下から第1ペアと茶臼岳を見上げる。(右)路側にある駐車場。
本年1月の新聞報道で、那須温泉ファミリースキー場の営業が休止されることがわかった。「那須町は27日の定例記者会見で、湯本の町営スキー場『那須温泉ファミリースキー場』の営業を3月末で休止すると発表した。老朽化したリフトなどの修繕費が確保できないと判断した。今後は年間を通した誘客施設への転換に向け、跡地の活用法を検討する」とのこと(下野新聞)。
1961年に町営のスキー場として開業。1970~80のピーク時には毎年5万人ほどの利用者がいたが、近年は客足が減少。小雪だった2019年には1日もリフト運行ができなかった。今年3月にはリフト券とソリパークが無料となり、抽選会もある大感謝祭が開催された。
(左)休暇村。(右)休暇村からゲレンデへの砂利道。駐車場は右側階段下。
私は1994年1月に一度だけ滑りに訪れたことがある。職場の仲間と東京から出かけ、1日目は羽鳥湖で滑って那須国民休暇村で宿泊。2日目は赤面山(白河高原)あたりに行く予定だったが、ひとりが体調を崩してしまい近場で軽く滑って帰ることになった。
休暇村のすぐ目の前にあり、当時は那須岳スキー場という名だったのではないだろうか。そのときはあまり積雪が多くなくて、雪質はあまり楽しめるようなものではなかった。緩斜面中心のリフト2本のコンパクトなファミリースキー場であり、じっくり滑るというよりは仲間で雪遊びするような感じで半日を過ごした。茶臼岳を間近に眺める素晴らしい景観が記憶に残っている。
(左)ゲレンデ下にあるセンターハウス。(右)第1ペア乗場。
スキー場ガイドには以下のように紹介されていた。「茶臼岳南斜面山麓に開かれた那須温泉ベースのファミリー向きゲレンデ。首都圏から日帰り可能な距離にある」(オールスキー場ガイド2000、立風書房)直近ではペア2基、スノーエスカレータ1基を備えていた。
2017年3月に付近で発生した雪崩事故が記憶に新しい。春山登山講習会に参加していた高校生ら8人が亡くなった。スキー場のすぐ近くで発生したもので、大きな衝撃を受けた。そんな事故も暗い影を落としていたのだろうか。那須連峰を眺める景観だけでも、清々しい気分にさせるゲレンデであったが……。
(左)ゲレンデ下から第1ペア上部を見る。(右)ソリゲレンデ。
5月にあらためて現地を訪問してみた。那須ICから茶臼岳のロープウェイを目指す。硫黄の匂いが漂ってくる。平日なのに殺生石あたりは。それなりの観光客の姿が見られた。休暇村の建物を左手に見ると、すぐに左側路側に駐車場があり、「那須温泉スキー場・駐車場」の掲示。車をとめて左手の階段を上ると、休暇村とゲレンデをつなぐ砂利道に出る。右手にわずかに歩くとゲレンデ下に出た。
ペアリフト2基はいずれも搬器が付いたままで、いまにも動きそうである。正面には茶臼岳がそそり立っている。左右に振り分けられたゲレンデはいずれも緩斜面だが、全体を見渡せるゲレンデレイアウトはファミリーゲレンデとしては最適だっただろう。茶臼岳に上っていくロープウェイの姿が見えた。小雨混じりの天候が、周囲の新緑をいっそう際立たせていた。(現地訪問:2022年5月)
(左)第2ペア乗場。