(左)グリーンロッジ前の案内板。遊歩道が整備され、季節ごとの花々を見ることができる。ゲレンデは扇状に広がっていた。(右)ゲレンデ脇にあるグリーンロッジ前から見たゲレンデ。
「乙女高原」という名前には、どれほどロマンチックな高原なのだろうかと想像をはたらかせてしまう。いまは山梨市に合併となった旧牧丘村。近くの小楢山に登山したことはあったが、焼山峠をはさんで反対側に位置する乙女高原を訪れたことはなかった。そんな乙女高原にスキー場があった。
山梨県は多くの山々に囲まれているのだが、イメージに反してスキー場にはそれほど恵まれているわけではなかった。1951年1月,乙女高原スキー場は山梨県内で初めて、競技大会が開催できる本格的なスキー場としてオープンした。標高は約1,700mで雪質は良かった。当初は一帯をスキー場にする壮大な構想があり,乙女高原は「(山梨県営)金峰山麓スキー場・乙女ゲレンデ」と呼ばれていた。しかし西保までバス、そこから徒歩4時間という当初のアクセスはなかなか厳しかった。その後近場に手軽なスキー場が次々とオープンしたこともあって、2003年3月には閉鎖されてしまった。ロープトウが設置されていたという記録を見たことかある。
スキー場として使われなくなっても、いまだに草刈りが継続されている。積雪はそれほど多い地域ではなかったため、ゲレンデに枯草が出ないように当初から初冬に草刈りが行われていた。スキー場の最後に時期には人手不足で草刈りが十分に行われなくなり、草原の中には若い森まで遷移が進んでしまったところも出てきたという。その後スキー場が閉鎖となっても、春夏秋に花々が見られる草原としての姿を維持しようという運動が行われ、ボランティアによる草刈りが継続されている。
(左)下部の駐車場から見上げる。(右)ゲレンデ下部の遊歩道から見上げる。
「熱中症に注意」といわれるほど猛暑の7月下旬の休日。旧牧丘村の中心部から山間に車を進め、乙女高原を訪れる。まずは扉が閉まっているグリーンロッジの前に車をとめて、乙女高原の全景を眺める。草原の中に通じている遊歩道や、この季節に見られる花々の写真など多くの掲示がある。ゲレンデは少し下った位置にある駐車場が最低部で、そこから上部に向かって扇状に3つほどのコースが分かれていたようだ。
最下部から遊歩道を一周してみる。ゆっくり歩いても30分ほどで一周できる。この季節、草原の主役は黄色いキンバイソウや白いヨツバヒヨドリ。ゆっくり歩いていると、いつの間にかゲレンデ最上部に出てしまった。グリーンロッジの赤い屋根がはるか下に見えて、思っていた以上に規模が大きいゲレンデだと分かった。正面に見える山々の名前を記した写真が掲示されている。金峰山や北奥千丈岳といった奥秩父の名峰の名前もあり、それらを眺めながらの滑走はさぞ雄大だっただろうと思われた。(現地訪問:2014年7月)
(左)遊歩道の最上部からゲレンデ斜面を見下ろす。(右)遊歩道最上部にあった山名案内板。