(左)クワッドリフトの下からゲレンデを見上げる。(右)ヤマビココース・やまぴこ駐車場より左側は木島平スキー場。
北信州の盆地から見あげる高社山は、端正な独立峰をもたげて裾野を延ばしている。その高社山を囲んで、東側には北志賀エリアのゲレンデが広がり、北斜面には双子のように木島平スキー場とこの牧の入スノーパークがあった。牧の入のゲレンデは中野市と木島平村にまたがっていて、斑尾高原豊田スキー場が営業休止の間は中野市域唯一のスキー場でもあった。
1970年(昭和45)の開設。私は1987年3月に一度だけ、木島平との共通リフト券で滑ったことがある。あまり強い印象が残っていないが、上部に行くほど斜度がきつくなる比較的単純なレイアウト。最大斜度30度、最長滑走距離1,500m。最盛期にはクワッド1基・トリプル1基・ペア5基という規模を誇っていた。
ただ、最近はスノーボード専用ゲレンデのようで、スキーヤーとしては選択肢の中には入れづらかった。木島平・牧の入・高井富士3ゲレンデ共通券が発売されていた時期もあり、結びつきを強めてビックゲレンデとして売り出す方法もあったのではなかろうか。スキー場に囲まれて満身創痍との形容もされる高社山ではあるけれど。
メインのアクセスは飯山市街から千曲川を東岸に渡り、木島平村経由ということになるのだが、飯山まで行ったらどうしても斑尾・野沢温泉・戸狩といった方面に目が向きがちだった。同じエリア内でも、木島平がメインで牧の入はサブという印象はぬぐえなかったと思う。
昨年9月に運営会社(大和観光興産)から、今シーズンの営業休止が発表された。そのときの報道によれば「利用者減少に伴い、単独の経営は困難と判断した」との説明であった。バブル期に5億円台だった売上高はここ数年、4千万~4500万円で推移。累積赤字がふくらむ一方でスキー客が増える見通しは立たず、5年ほど前から営業休止を検討してきたという。「これから1年半をかけ、組織・体制の見直し及び立て直しを模索する」「一緒に経営してくれる相手を探したい」とのことで、今後の可能性を探っているようである。
(左)第1リフト下からクワッド乗場の方向。(右)ゲレンデ下のロッジ・レストランなどは雪に埋もれ、人影はない。
日曜日の午後3時過ぎ。国道403号から木島平スキー場へのアーチをくぐる。木島平からの帰り車とすれ違いながら、途中で右折して牧の入に向かう。除雪されている駐車場に車を乗り入れ、圧雪車で固められているゲレンデ下部まで歩くことができた。ゲレンデの中心であったクワッドとトリプルの前に立つと、新雪に覆われたゲレンデが見渡せる。圧雪車もかたわらにあり、スタンバイしているかのようだ。
クワッドリフトの椅子も綺麗に並べられ雪を被っている。たまたま今年の冬が特別な出来事で、来シーズンからはまた何事もなかったかのように働くのだといいそうな表情である。ゲレンデ下に並ぶ何軒ものレストラン・ロッジ・土産物屋に人影はなく、扉を閉ざしてひっそりとしている。となりの木島平からリフト終了時刻を告げるアナウンスが、かすかに聞こえてきた。(現地訪問:2010年1月)
【追加報告】
Mt.KOSHAの一部として再開した牧の入スノーパークに滑りに出かけた。ゲレンデ下の駐車場まで「Mt.KOSHA」「牧の入」の案内表示は再整備されていた。正月休みなのでとなりの木島平は結構賑わっていたが、牧の入は閑散としていた。稼動リフトは第3ペア・第5ペア・第6クワッドとアナウンスされていたが、現地に行ってみると第5ペアは動かしていなかった。動かすほどの客もいなかったが。
よませ・高井富士・やまびこの丘・木島平・牧の入をあわせて共通リフト券を発売し、Mt.KOSHAとしたもの。ただ、よませ・木島平はスキーヤーが多く、高井富士・牧の入はスノーボーダーが多いゲレンデという印象が強く、そのあたりがこの「統合」でどうなるのか、気がかりなところ。
ゲレンデは圧雪などの整備はほとんどされておらず、新雪フリークには楽しいだろうが、一般客はなかなか楽しめないのではないだろうか。クワッド下にレストラン1軒、無料休憩所1軒が開いていたが、他は休業状態。周辺の宿泊施設もごく一部が再開したに過ぎないようだ。
隣接する木島平とは客層もかなり違うようだし、正月休みにこれだけの集客ならば、再開する意味があったのか、と思われても仕方ないだろう。(2012年1月)
(左)第3ペア下から。(右)第6クワッド下から。
2013シーズンは「営業見送り」。現地を訪れても、リフトはとまっていた。(2013年2月)
2014シーズンも牧の入のリフトは動いていなかった。(2014年1月)
コメント欄にある通り、今シーズンより再開されるとのこと。近くに出かけたついでに覗いてみると、遅い時間だったためかリフトはとまっていたが、細々と営業している気配があった。第3ペアの乗場にはリフト1日券1,000円という案内もあり、駐車場やゲレンデも整備されていた。稼働リフトは2本のようす。(2017年1月)
木島平に出かけた際に寄ってみるとリフト1本が稼働していた。人の姿はほとんど見られない。駐車場の一角に「リフト券売場」と書かれた真新しい建物が建てられていた。再び力を入れようということなのか。なお、木島平とはリフト券は別になっているもよう。(2017年12月)
ラベル:牧の入