(左)分岐点にはまだ「イトシロシャーロットタウン」の文字が。(右)駐車場小屋付近から、前方はセンターハウス。
以前、日本各地に点在する巨木について調べたことがあった。そのとき、知ったのが「石徹白の大杉」、そして白山信仰の東海側からの拠点であった石徹白という地名。九頭竜川の支流である石徹白川に沿う村なので、水系の区分にもとづいて昔から越前に属していた。明治の廃藩置県を経て福井県になったが、石徹白川に沿う谷は険しいため特に冬期には通行に難渋をきたしていた。峠を経て白鳥に出るほうが容易であり、古くから岐阜側との結びつきが強かった。そのため1958年に岐阜県に編入となっている。それほど山深く、雪深い土地だということでもあろう。現在でも福井県側への道は冬期通行止めとなっている。
前置きが長くなった。そんな石徹白にあったスキー場が、イトシロシャーロットタウン。1970年の開業。今シーズンから営業を休止している。奥美濃エリアにあっては比較的コンパクトなスキー場で、センターハウスがあるゲレンデボトムから、最盛期にはクワッド1本・ペア2本・シングル2本が並列に架けられていた。近年はスノーボーダーの比率が高いスキー場だったようで、ハーフパイプなどのアイテムも備えていた。ネットの口コミなどでは「すいている」のがメリットとされていたようだ。ゲレンデ下部は緩斜面、上部は上級コース。左手にいくつかの林間コースが開かれていた。最大斜度35度は、一番右手の第1ロマンス沿いにあった。最長滑走距離は1,300m。
(左)クワッドリフト下からゲレンデを見上げる。(右)ゲレンデ右にある第1リフト・第1ロマンスはしばらく前から稼動していなかったと思われるが、そのまま残っている。
各地のスキー場が賑わいをみせている1月の休日、国道156号から西北側に分岐して石徹白を目指す。分岐点には、ウィングヒルズ・白鳥高原と並んでイトシロシャーロットタウンの案内板もそのまま残されていて、石徹白に至る道沿いにも「休業」などの表示はいっさいなかった。
急カーブが続く桧峠への道。峠を過ぎ、駐車場入口に車列ができているウィングヒルズの賑わいを過ぎれば車の姿を見なくなる。ほどなく、石徹白の村落の南側にある、北斜面のゲレンデが左手にあらわれる。駐車場入口には「平日無料」と書かれた、駐車料金を徴収していた小屋。その向こうに雪に埋もれて人気のないセンターハウス。センターハウス前まで圧雪されていて車を乗り入れることができた。その前にはクワッドリフトの乗場と、それに平行している第2ロマンスリフトの乗場。いずれもリフト施設はそのままの姿で雪に埋もれている。右手に2基のリフトがあるが、こちらはしばらく前から稼動していなかったようだ。
ゲレンデ下には何軒か「民宿」という看板を掲げた建物が見られたが、当然ながらスキー客の姿はない。そんな一軒の前で人のよさそうな小母さんに聞いてみる。「スキー場は今年からお休みなんですよ。わざわざ来てもらったのにねえ。また、やるようになったら来てくださいね」といわれた。しかし、再開のときが来るのだろうか。わからない。(現地訪問:2012年1月)
(左)石徹白村落の上部から見たスキー場全体。(右)クワッド乗場にあったゲレンデマッブ。
ラベル:イトシロシャーロットタウン