2012年02月08日

イトシロシャーロットタウン(岐阜県郡上市)

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(左)分岐点にはまだ「イトシロシャーロットタウン」の文字が。(右)駐車場小屋付近から、前方はセンターハウス。

以前、日本各地に点在する巨木について調べたことがあった。そのとき、知ったのが「石徹白の大杉」、そして白山信仰の東海側からの拠点であった石徹白という地名。九頭竜川の支流である石徹白川に沿う村なので、水系の区分にもとづいて昔から越前に属していた。明治の廃藩置県を経て福井県になったが、石徹白川に沿う谷は険しいため特に冬期には通行に難渋をきたしていた。峠を経て白鳥に出るほうが容易であり、古くから岐阜側との結びつきが強かった。そのため1958年に岐阜県に編入となっている。それほど山深く、雪深い土地だということでもあろう。現在でも福井県側への道は冬期通行止めとなっている。

前置きが長くなった。そんな石徹白にあったスキー場が、イトシロシャーロットタウン。1970年の開業。今シーズンから営業を休止している。奥美濃エリアにあっては比較的コンパクトなスキー場で、センターハウスがあるゲレンデボトムから、最盛期にはクワッド1本・ペア2本・シングル2本が並列に架けられていた。近年はスノーボーダーの比率が高いスキー場だったようで、ハーフパイプなどのアイテムも備えていた。ネットの口コミなどでは「すいている」のがメリットとされていたようだ。ゲレンデ下部は緩斜面、上部は上級コース。左手にいくつかの林間コースが開かれていた。最大斜度35度は、一番右手の第1ロマンス沿いにあった。最長滑走距離は1,300m。

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(左)クワッドリフト下からゲレンデを見上げる。(右)ゲレンデ右にある第1リフト・第1ロマンスはしばらく前から稼動していなかったと思われるが、そのまま残っている。

各地のスキー場が賑わいをみせている1月の休日、国道156号から西北側に分岐して石徹白を目指す。分岐点には、ウィングヒルズ・白鳥高原と並んでイトシロシャーロットタウンの案内板もそのまま残されていて、石徹白に至る道沿いにも「休業」などの表示はいっさいなかった。

急カーブが続く桧峠への道。峠を過ぎ、駐車場入口に車列ができているウィングヒルズの賑わいを過ぎれば車の姿を見なくなる。ほどなく、石徹白の村落の南側にある、北斜面のゲレンデが左手にあらわれる。駐車場入口には「平日無料」と書かれた、駐車料金を徴収していた小屋。その向こうに雪に埋もれて人気のないセンターハウス。センターハウス前まで圧雪されていて車を乗り入れることができた。その前にはクワッドリフトの乗場と、それに平行している第2ロマンスリフトの乗場。いずれもリフト施設はそのままの姿で雪に埋もれている。右手に2基のリフトがあるが、こちらはしばらく前から稼動していなかったようだ。

ゲレンデ下には何軒か「民宿」という看板を掲げた建物が見られたが、当然ながらスキー客の姿はない。そんな一軒の前で人のよさそうな小母さんに聞いてみる。「スキー場は今年からお休みなんですよ。わざわざ来てもらったのにねえ。また、やるようになったら来てくださいね」といわれた。しかし、再開のときが来るのだろうか。わからない。(現地訪問:2012年1月)

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(左)石徹白村落の上部から見たスキー場全体。(右)クワッド乗場にあったゲレンデマッブ。

2011年11月08日

寒水スキー場(岐阜県郡上市)

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(左)県道からの分岐点。(右)一段下の駐車スペースからゲレンデに向かう。

秋の山はいい。空気がぴんと張りつめたようで、色づく木の葉もそれに呼応するかのように季節の緊張感を思い起こさせる。国道脇に積もり始めた落葉が、ひんやりとした風に舞い上がり、季節が確実に冬に向かっていることを教えてくれる。郡上八幡から高山へぬける国道472号。「せせらぎ街道」という愛称がつけられ、休日には飛騨方面に向かうツーリングのバイクも多く見られる。中京地域の方にとっては、「めいほう」への通い道ということになるのだろうか。

郡上八幡の町から10数キロも遡った「道の駅・明宝」。その手前にある県道82号の分岐には「寒水口」のバス停もある。県道82号に入って進めば、途中、大きなヘアピンカーブがあって寒水(かのみず)集落の中心部へと入っていく。寒水川に沿ったわずかな平地に開かれた集落は、いまや陳腐となった表現を使えば「日本の原風景」ということになろうか。寒水にある白山神社で9月に行われる掛踊は300年間踊り継がれていて、岐阜県重要無形民俗文化財と国の選択無形民俗文化財に指定されている。

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(左)ゲレンデ下部から見上げる。(右)ゲレンデ中腹から見おろす。

村内の数箇所で昔のスキー場について訪ねたが、農作業をしながら誰もがその所在地を丁寧に教えてくれた。「大和(やまと)へ向かう道に入って2~3軒目の家の裏山のような場所」というのが、多くの人の教え方。県道沿いに「大和町古道へ」と書かれた標識を見て西に向かう道に入れば、2軒目の家と3軒目の家の間に山側へ続く未舗装路。それを上れば、寒水スキー場の跡地に出る。ゲレンデ下に立てば全体が見渡せるほどの規模で、全体に均一な緩斜面に見える。ロープトウが1基あったという記録を見たことがある。ゲレンデの一段下、左側にはトタン張りの建物があり、中にはテーブルやスキー板・ブーツなどが散乱していた。食堂やレンタルスキーの建物だったのだろう。いまは廃屋同然である。

ネット上の案内には「寒水スキー場は、毎年12月中旬から3月下旬まで開設されます。ゲレンデは1つ、コ-スは2つ有ります。交通は新岐阜からバス八幡本町(乗換え)で寒水口下車、村営バス桜尾下車が便利です」と記載されていた。岐阜方面からは手軽に来られるロケーションだったとは思うが、規模から考えるとスキーを始めた小学生などが練習するのにちょうど良いくらいのゲレンデだったのではないだろうか。(現地訪問:2011年10月)

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(左)ゲレンデ下部にある食堂やレンタルスキーの建物。

2011年06月10日

揖斐高原スキー場坂内ゲレンデ(岐阜県揖斐川町)

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(左)立派なレストハウスが建っている。左奥にゲレンデが見える。

揖斐高原スキー場は貝月・日坂・坂内の3つのゲレンデから構成され、もちろん共通のリフト券で滑ることができた。そのうち一番西側にある坂内ゲレンデは2009シーズンから営業を休止している。貝月・日坂と坂内の両ゲレンデを結ぶ車道は冬期通行止めのため、坂内ゲレンデにアクセスするには、いったん旧坂内村まで行き、そこから南に向かって上っていくというかなり大回りな行き方か、または日坂ゲレンデのリフトに乗って、その最奥部から滑り込むしかなかったようだ。アクセスには手間がかかり、それが災いしたのかもしれない。

「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」の「揖斐高原」の項には「貝月山の北斜面に日坂・貝月・坂内のゲレンデ。積雪は豊富でパウダースノー。R303沿線にありマイカー利用に便利。ナイター21時45分まで」と紹介がある。揖斐高原全体としては、西美濃地区では最大のスキー場ということらしい。

揖斐川というと、木曽三川のひとつとして最下流で輪中をつくりながら滔々と流れる姿しか知らないので、その上流であろう揖斐高原のイメージは余所者にはわかりにくかった。揖斐川町の中心部からトンネルやダム湖を経て旧坂内村の中心部へ。そこから「揖斐高原」の標識に従って南の方向に上っていく。ダチョウ牧場という標識が見えれば、その先に「揖斐高原スキー場・休業」といううち捨てられた看板があり、そこを右折。白い立派なレストハウスの建物が見えてくる。壁面には、IKCC(揖斐高原カントリークラブ)の文字も見える。かつてはホテルやゴルフ場のクラブハウスとしても機能していたのだろう。廃屋となった建物の内部はいろいろなものが散乱しているようだった。

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(左)リフト降場付近。向こうにレストハウスが見える。(右)ゲレンデ最上部から見おろす。

このレストハウスの前後にはいくつもの駐車場の跡がある。少し前には、レストハウスの西側(右側)にもゲレンデが広がっていたようだ。建物の東側(左側)に少し離れて、ペアリフトとその両側に広がっていたゲレンデの跡が見える。ゲレンデ上部のリフト降場に行ってみると、最下部までにはかなりの滑走距離がとれるように見える。右手には日坂ゲレンデとの連絡コースの跡も見て取れる。周囲には残雪も見られた。

続いて少しヤブを漕ぎながら、ゲレンデ最下部のリフト乗場に行ってみる。リフトの施設は、椅子を撤去された他はそのまま残っているように見える。リフト券売場の小屋、リフト管理の小屋などはいまもそのまま残っている。一直線に伸びるリフトの両側には杉の木が植えられ、その両側に中初級者向けのゲレンデが広がっている。ボードパークやソリゲレンデも備えられていたようだ。北斜面の山腹には残雪とともに、咲き始めた白い樹花が斑模様をなしているのが見えた。(現地訪問:2011年4月)

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(左)リフト乗場付近からゲレンデを見上げる。
ラベル:揖斐高原

2011年05月28日

遊らんど坂内スキー場(岐阜県揖斐川町)

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(左)「遊らんど坂内」の大きな看板。(右)ゲレンデ手前に広い駐車場。

大垣方面から揖斐川町の中心部を通り過ぎ国道303号を辿れば、長いトンネルを何本か通り過ぎ山間部へと分け入っていく。横山ダムのところで左折して、横山貯水池の際を走るあたりで道は一段とか細くなるが、それを過ぎれば旧坂内村のほのぼのとした山村風景が広がる。山間の小盆地はちょうど桜や水仙の花が咲き、一年で一番美しい季節を迎えようとしていた。

村の中心近くに位置する「道の駅」のすぐ先には「遊らんど坂内」の大きな案内看板が掲示されているが、そこには小さく「スキー不可」と書き添えられていた。数年前からスキー場の営業は休止している。看板の箇所を右折して、桜並木と小さな流れに沿って進めば程なく「遊ランド坂内スキー場」の駐車場に導かれる。

広い駐車場の先には、「遊」という文字が壁面にある、三角形を二つ組み合わせたような洒落た外観のセンターハウスがある。ところどころガラスが割れ、2階食堂にはテーブルや椅子が散乱し、1階にはレンタルスキーの備品などが朽ちていた。その傍らにダブルで掛かるペアリフトの乗場がある。もっとも最後の頃は、ダブルのうち1基だけしか運行されていなかったようだが。リフトの椅子は取り外されているが、それ以外は営業時のままのように見える。

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(左)印象的な外観のセンターハウスは廃墟に。(右)ゲレンデ中腹からリフト乗場を見おろす。

ゲレンデを見上げれば1枚バーンの隅々まで見渡すことができるので、ファミリー向けには適した斜面だったのだろう。ゲレンデ中央部に小高くなった場所があり、それがスロープに変化を与えていたようだ。その場所には桜の木があり、満開の花をつけている。背景の山並には、ところどころ残雪が見えた。

「さかうちダチョウ牧場ブログ」には、「(2009年12月08日)遊らんど坂内スキー場から残念なお知らせ。今シーズンの冬季営業は誠に勝手ながら休止することになりました、来シーズンの夏期営業再開も未定です。長年にわたりご利用有り難うございました」と記載されていた。2009シーズンが最後の営業だったと思われる。

「オールスキー場完全ガイド2000(立風書房)」には「ファミリー向けゲレンデ。愛知・岐阜のたいていの市街地から2時間以内の近さが魅力で、おしゃれな設備や施設も人気。休前日にはナイター営業もある。託児所1時間1,000円。2時間1,400円」と紹介されている。

期間は12月下旬~3月中旬となっているが、最後の頃は雪不足により営業日数は極めて少なくなっていたようだ。スノーボード全日・全コース滑走可能。人工マットにより、夏期もスキーが楽しめた。アクセスは近鉄揖斐線(現在は養老鉄道)揖斐駅からバスで50分、または、名神道大垣ICまたは関ヶ原ICから50km、60分と記載されている。(現地訪問:2011年4月)

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(左)ゲレンデ全体を見渡す。
ラベル:遊ランド坂内

2010年10月03日

白鳥スキー場(岐阜県郡上市)

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(左)ゲレンデ下にあったリフト乗場の痕跡。(右)ゲレンデ下から見上げる。遊具やベンチなど公園として整備されている。

国土地理院の5万分の1地形図「白鳥」を、はじめて見たときはびっくりした。その地図に表示されたスキー場のおびただしい数にただ驚くばかりだった。「奥美濃」と呼ばれる長良川上流域を表示している地図になるのだけれど、信越や上越方面でも、これだけの密度でスキー場が集中している地域はないのではないかと思えた。関東や信越方面にいるとこのあたりがどんな地域なのか想像がつきにくいけれど、以前、白山長滝神社を訪れたとき、宮司さんに「冬の積雪は5mにもなる」と聞いた話を思い出した。

「白鳥」図幅に登場するスキー場は、似たようなネーミングか多くて紛らわしい気がする。今回取り上げるのは「白鳥スキー場」だが、同じ郡上市域にある「スノーウェーブパーク白鳥高原」「ウィングヒルズ白鳥リゾート」とは別物。東海北陸道の開通によって、一帯のスキー場はアクセスが格段に便利になったはずだが、それ以前に、あるいはそれがあっても消えていったスキー場もやはり多いようである。

白鳥の市街地から国道156号で北に向かう。太田集落から西側の山中に上っていけば、「延年の森」として整備された公園に出る。ここが「白鳥スキー場」の跡地のようだ。下部にはあずまやや遊具が置かれ、斜面は地元ロータリークラブや小学生によって植樹され、森林にもどす取組みが行われているようだ。公園最上部まで林道が通じているが、そこまで上ればなだらかな東向き斜面の向こうに長良川と対岸の山々を望むことができた。

公園のあずまやなどより下に、リフトのコンクリート基礎部分があった。ここから、ゲレンデトップに向かって右側にシングルリフトが1本だけ架けられていたと思われる。最後の頃にはナイター設備もあったようだ。営業開始・終了の年月について、現在のところはっきりした資料は見つけていない。スキー場閉鎖後はゴルフ練習場だったとの記録もあるが、その後、公園として整備されたのは喜ばしいと思う。あまり利用されているようには見えなかったが、自然の森林に戻っていけばそれでいいのだろうと思う。(現地訪問:2010年5月)

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(右)ゲレンデ最上部の展望台から斜面を見おろす。眼下に長良川が光る。
ラベル:白鳥スキー場